藪こぎ

こんにちは、一山人行です。

藪こぎ登山の季節が来ました。
小生は登山(山歩き)を余暇の楽しみのひとつとしています。
と云っても岸壁への取付きや沢登りなど高度なテクニックを要する上級者向けの山登りではなく、
もっぱら標高1,500m前後の樹林帯の残る低山の山歩きを対象としています。
そんな低山の山歩きのなかで、たまに、藪こぎを強いられる行程を歩きたくなることがあります。
藪こぎがあるルートを選択する場合は、
一人で山に入り途中で人に出会わないことが乙な歩き方となります。
”一人山行“がスリルがあって楽しいのです。
山歩きのコースは市販の登山案内地図上に、登山道としての赤線の記載がないところや、
実際に道標が整備されていないところが主です。
多くはルートファインディングが必要になります。
この山歩きが終わったときの感覚は、
或るとき、知らない街に迷いこんでしまって一日中歩きまわるうちに、
ふと、見覚えのある煙草屋を街角に見つけたとき味合う安堵感に似ています。
山中で迷って遭難するリクスを伴うので、しっかりとした登山靴で足元を固め、
時にはビバークに備えて一人用テントや寝袋もリュックに詰めて出掛けます。

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小生がいままで歩いたうちで、好きな山は大菩薩連嶺です。
深田久弥の日本百名山にも挙げられていますが
この山嶺の峰々がもつ清々しさは群を抜くものがあると思っています。

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そのなかでも、藪こぎが登場する、とっておきのルートをご紹介します。
それは源次郎岳から恩若の峰へのルートです。
小生が出掛けた時期は12月の初めでした。
晩秋から春の兆しが見えるころまでが見通しがきいて歩きやすい季節です。

JR塩山駅からバスに乗車、裂石登山口で下車し、
上日川峠までは普通の登山道を上ります。
ここまでは一般的な大菩薩峠(大菩薩連嶺)への登山道です。
上日川峠から大菩薩峠へは左方の登山道を選択するのですが、
ここから足の舵を南に切り、日川尾根に入ります。
この尾根への道筋は登山者が少ないせいかすぐに不明瞭になり、かすかな踏跡だけになります。
そのかすかな踏跡も途中から落ち葉に隠されてしまいます。
2.5万分の1地図と磁石を頼りにして、ただただ、南の方向に尾根の左右をたどります。
2時間ばかり歩いたところで、右手の側に急坂の尾根の分岐が樹林の中に薄っすらと見えました。
歩いた距離と周囲の景色と地図を見比べておそらくここが源次郎岳への登り口と当たりをつけて、
右手の樹林の間をかき分けて急斜面をよじ登ってゆきました。
30分ほど登ったところに急に視界が開け、山の頂に出ました。
やはり、ここが源次郎岳でした。思いの外早く到着しました。

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頂上は明るく開けていますが、
遠くの山の端が木々の間から垣間見られるだけで、良好な見晴らしはありません。
標高は1,476mなのに深山の趣があります。
まったく、浮世とは隔絶した世界が広がります。
耳を澄ませても人や獣の生活の音が皆無です。
緩やかな風の音、木々が擦れ合う音まで優雅に感じられます。
なぜか気持ちがすっきりするところです。

頂上の隅の方に升岩と呼ばれる由緒ある畳6帖ほどの平な岩があります。
升岩の上は冬だというのに陽の光を受けているせいかなぜか暖かいのです。
この岩の上で休憩をすることにして、
コッヘルをとりだし、キャンベルのスープ缶を開け、
ここにコンビーフやチーズを入れて温めて、フランスパンの切れ端と一緒に昼食をとりました。
食後は、お湯を沸かして紅茶を飲みます。

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そのまま、あまりの気持ち良さに岩の上に大の字になって昼トカゲをしていて居眠りをしてしまいました。
そのままひとときを過ごし、陽が西に傾きかけたころ気がついて目が覚め急いで下山することにしました。
源次郎岳から西の塩山への方角をとります。
道のない西斜面の急坂を木々につかまりながら慎重に鞍部までおります。
ここからは尾根の上の藪こぎが始まります。

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一呼吸いれて、頭からヤッケをかぶり、
灌木や熊笹の茂った尾根と思しきところを、猪にように頭を下げて、
枝が目に入らないように手でかき分けてひたすら西の方角に進みます。
2時間ほど藪と格闘しながら進んだところで踏み跡が現れてきます。
獣道に迷い込まないように、沢筋におりないように注意して尾根を巻きながら進みます。
少し上り坂になったかと思った途端に狭い山頂に出ました。
ここが標高982mの恩若の峰であることが判りました。
山頂から少し下ると急に西側の麓の展望が開け塩山の町並みが一望できました。
ここまで来た時に安堵感と達成感が沸き起こってきます。
後は、小一時間余り、余韻に浸りながらつづら折の小径を塩山駅までゆっくりたどることができました。

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この山歩きのルートは、道中の眺望は余り望めないのですが、
上日川峠から全く人に会わずに歩き通すことができ
水墨画に出てくるような別の世界に入り込んだような錯覚を抱かせてくれるところです。
ぜひ、皆さんも時間を見つけて出掛けてみてください。
登山者が多くて人いきれさえする名の知れたルートでは味わえない何かを感じることができると思います。

一山人行

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