「暗いところ怖い」

こんばんは、天王洲ヌバタマです。

いつの日であったか、
会社の休息室(コミュニティールーム)に置かれている
日経新聞の第一面の左下に春秋というコラムがあり、
このコラムの中で「山怪」という書籍が紹介されていました。
あとになって、
立ち寄った書店で積んであるこの書籍が
ふと目に止まり購入しました。

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あっという間に読み終えてしまいました。
読んだあと言い知れず怖さが残りました。

この本は、マタギを中心とする東北地方などの
山村部で起こった奇怪現象を、
カメラマンである著者が
丹念にヒアリングしてまとめたものです。
新聞では遠野物語の現代版と紹介されていました。

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むかし、遠野物語を読んだときには、
実話とは言え、格調高い文語調であったせいか
そちらに気をとられてか何ともなかったのですが、
この「山怪」の書籍に出てくる話が
現代の夜に起こった出来事の収録であるせいか、
いささか怖くなりました。

この本を読んだあと、
なぜか、暗いところが苦手になりました。
闇のなかから、何か出てきそうな感じがするのです。
さすがに都会の中ですから、
狐や狼は出て来ないでしょうが、
薄暗いビルのオフィス通路に、
人影だけがカーペットに映って姿が見えないとか、
消灯したフロアに、
得体のしれない誰かが潜んでいるとかが
ありそうな気がするのです。
そう言えば、
昔も暗いところが怖かったことを思い出しました。

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幼少の頃、便所(厠)は北の端の離れにありました。
母屋から渡り廊下をつたってゆくことができますが、
子供から見ると、
厠は母屋からまったく隔絶された世界にありました。
厠の前には、幅が3尺(約90cm)程の
ひと一人がやっと通ることができるほどの幅の、
茗荷畑につながる小径がありました。

小径の向こう側は、
大人の背丈ほどの石垣が続いており、
石垣の上は普段は人気のない、
古びた2階建ての蚕室がありました。

石垣はちょうど厠の前で尽き、
厠の前には小径をはさんで、
鬱蒼とした手入れの行き届いていない
大きな竹藪がありました。
厠は、小と大それぞれに
大人でもやっと手がとどく高いところに
1尺四方の窓が切ってあり、
その窓は通気をよくするために
いつも開け放たれていました。
昼間でも決して明るい場所とは言えず、
近づくのに勇気がいるのに、
夜はそれこそ一大決心をしていく場所でした。

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夜中に厠に用を足しに行かざる得ないとき、
やっとたどりついた厠で明かりと言えば
大と小の間に1個の40Wの薄暗い裸電球が
天井近くにつり下がっているだけです。

夜の窓の外には闇のみがあります。
いつも、黒い窓の外から、
サヤサヤと竹藪の笹が擦れ合う音が聞こえます。

ある夜のこと、
前の小径からヒタッヒタッと
草履で地面を踏みしめるような足音が聞こえました。
その足音は厠の前で止まり、
風とともに竹藪の笹がササッーと擦れるような
音を立てたかと思ったときに、
手拭いを頭に被った、
のっぺりした白いひとの顔が四角い窓枠の中にあり、
すぐに消えてしまいました。
急に背筋がぞくぞくして、
寒気がしたことを思い出しました。

小生は霊感など皆無で鈍感な体質ですが、
最近、職場でもおかしなことがありました。

深夜、自分一人で仕事をしているとき、
この階のオフィスで自分の席の上の
蛍光灯だけ電気がついていて、
小生の他は誰もいないはずなのに、
壁を隔てた奥の会議室の方から
コツン、コツンと、中指でゆっくり壁(パーティション)を
ノックするような音が聞こえるときがありました。

また或る夜おそく、
エレベーター前までゆく真暗い通路で、
奥のトイレの方から
ほのかな明かりが漏れて見えていました。
おかしいな、1時間ほど前に用を足したとき
消灯して暗いはずなのに、と思って近づいてみると、
女子トイレに明かりが灯っていて、
中から、カサッ、カサッと紙を繰るような音が
かすかに聞こえてくるときがありました。

きっと、コツンコツンのノックの音は、
下の階で小工事か何かやっていたのでしょうし、
トイレの明かりや中の紙の音は、
たぶん別の階のトイレが故障し、
その階の人が
この階のトイレを利用していたためでしょう。

その時は、(仕事に夢中で)さして気にかけなかったのですが、
後になって、「山怪」の本を読んでから、
真夜中の出来事であったことに思い至り、
あやかしが出たのかもしれないと怖くなりました。

そういうわけで、
最近、なんだか暗いところが苦手になってしまいましたので、
昼間がずっと続けばいいなと思ってもいます。
本来の夜は、
何にも遮られない静かな澄み切った世界でもあります。
集中して何かに取り組めるひとときでもあります。
早く以下の歌のような、
円明寂静の心境に達したいと思うこの頃です。

ぬばたまの夜のふけゆけば久木生ふる
清き川原に千鳥しば鳴く
(山部赤人)。

chidori

yohuke

☆天王洲ヌバタマ☆

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