クールシェアと百物語?

お久しぶりです、残暑厳しい日々ですが、夏バテなどしていらっしゃいませんか。
極楽とんぼ、2ヵ月余りの間をおいて満を持しての投稿です。(笑)
そこで今回は残暑に因み、昨今よく目にする「クールシェア」のお話を少々。

まずはその前に「クールシェア」って何だぁ?
という方もいらっしゃるかと思いますので、まずは簡単なご説明から。

そもそも「クールシェア」は、東日本大震災直後に某美術大学のデザイン学科の
ゼミで、「今の状況に対してデザイナーは何ができるか」という問いかけに対して
生まれたアイデアで、昨年夏にはスーパークールビズの一環で、
環境省が取り入れ全国展開が始まったものです。

具体的には、真夏の日中、電気消費量の6割近くを占めるといわれるエアコンを、
一人一台使うのではなく、涼しい場所をみんなでシェアするというのがまさに
「クールシェア」の考え方で、家族がひとつの部屋でまとまって過ごしたり、
公共施設や商業施設で涼んだり、自然が多い涼しいところに行ったりすることで、
暑い夏を快適に過ごすだけでなく、同時に家族や地域の絆も深まるといった効果も
期待出来るというわけです。

そんなことは当たり前でしょ、という方もいらっしゃるかも知れませんが、
意外とそんな当たり前のことが出来ていなかったりするんですねぇ。(笑)

ここで突然ですが、皆さんは「百物語」という催しをご存知でしょうか。

起源は不明なのですが、日本の伝統的な怪談会のスタイルのひとつで、
夜に数人が集まって100本のろうそくに火をつけ、怖い話を1話語るごとに
ろうそくの火を1本ずつ消していき、最後の100本目が消えたときに妖怪や
幽霊が現れるといわれる遊びです。

candle

もしかすると、これもエアコンや扇風機などの暑さを凌ぐ機器がなかった時代の
生活の知恵のひとつ、つまり「クールシェア」だったのでしょうか。

話題はクールシェアから百物語へ急展開となりましたが、
ここでまだまだ残暑が続く毎日、それでは百物語を始めてみませんか。
怪談話や怖い話がお嫌いな方はここでお引き取りを!(笑)

それは今日のように暑い盛りの夜のことでした。
私は寝苦しくて、なかなか寝付けずウトウトしていたのですが、
どうやらまどろむうちに、夢をみていたようです。

夢の中の私は会社帰りで、駅で電車を降り、
自宅に向かいトボトボと疲れた足取りで歩いていました。

いつも通る公園の脇あたりまで来た時には、もうあたりは暗く、
街路灯の明かりだけがぼんやりと照らし出しているような淋しい夜でした。

その時です、駅を出てからこの公園に来るまでの道すがら、
ずっと誰かが一定の距離を保って、私の後を付いて来ていることに気付いたのは。

人気のない公園の脇道で、私は急にその不気味な空気に一瞬身の毛もよだち、
後ろを振り向くことすら出来ずに、一心に自宅を目指して足を速めました。

そうするとどういうことか、まるでその誰かは私の心を見透かしたように足を速め、
相変わらず一定の距離で付かず離れず、私に付いて来るではありませんか。

私は公園を過ぎ、曲がり角に差し掛かると同時に、
勇気を持って後ろを振り返り、その誰かを確かめました。

そこで見えた人物は、目深にベースボールキャップを被り、
その上からパーカーのフードで覆った、まったく顔の見えない大きな男性のようで、
右手には何やら鈍く銀色に光る金属のようなものを持っているようでした。

その人物は足を速めたにも関わらず、息ひとつ上げることなく、
相変わらず一定の距離をおいて明らかに私の後を追ってきます。
その様子からして、もう私が追われていることを疑う余地はありません。
私は今にも走り出したい気持ちを抑えながら、冷静を装って歩き続けました。

そして、やっと自宅のマンションのエントランスが見え始めた時、
私はとうとう駆け出していました。

当然のように尾行者は、私を追って同じように走り出したのは言うまでもありません。
 
ところが、こんな時にはマンションのオートロックも不便なもので、
暗証番号を押しているうちに、みるみる尾行者は私に追いつき背後に立つと、
私が振り返ったと同時に、いきなり手にした鈍く光る刃物を私の胸元に突き立てました。

本当に一瞬のことで私は何が起きたのか分からず、痛みを感じる間もなく、
ふらつく足取りでオートロックのドアを押して中に入り、
やっと大声で助けを呼ぼうとしたところで、怖い夢から覚めました。

目覚めてみると、シーツやピローカバーは、まるで水を撒いたように
グッショリと濡れていました。

人間というのは便利な動物で「忘却」という機能が備わっていることもあり、
そんな怖い夢をみても、どれだけか時間が経てば忘れてしまうようで、
私も次の夏が来るころには、スッカリそんな夢のことは忘れてしまっていました。

そんなある日、私は会社の送別会でビアガーデンに繰り出し、
そのあとは気の合う連中とお決まりのカラオケボックスで盛り上がり、
2本を残して終電という時刻に帰宅することになりました。

終電間際の電車は、週末ということもあり大変込み合い、
最寄り駅に着いた時には、降車出来ることが喜びといえるほどでした。

改札を出て、降車客は東西の出口から家路を急ぎます。
私もその中のひとりで、いつもと同じ道を自宅に急ぎます。

駅から遠ざかるに従って、だんだん人数も減っていき、
いつも通る公園の脇道に来た時には、
いつの間にか私一人になっていました。

夜遅いこともあって、公園は静まり返り、あたりに人気は全くありません。
その時です、急に忘れたはずの遠い夢の記憶が蘇り、私は恐怖を覚えました。
確かに背後に人の気配を感じたのです。

私は躊躇うことなく、一目散に自宅を目指して全速力で駆け出しました。
もう、その時にはビアガーデンで飲んだビールの酔いも、
カラオケボックスで飲んだカクテルの酔いも全部が吹き飛んでいました。

全身に噴き出す汗も構わず、走り続ける私を、
夢の時と同じように誰かの足音が追い続けてきます。

私はありったけの力を振り絞り、何とか公園の角にある公衆電話ボックスに飛び込み、
中から扉を両手で押さえ侵入を防ごうと身構えました。

ところが追ってきた足音の人物は、恐怖に怯える私をよそに、
その公衆電話ボックスの前を何事もなかったように通り過ぎて行きます。

その風体は、一年前の夏の夜みた夢と同じように、
ベースボールキャップを目深に被ったパーカー姿でした。

私はその人物が通り過ぎるのを見た途端、全身の力が抜け、
電話ボックスの中でその場に座り込んでしまいました。

その時、通り過ぎた人物が私のほうを振り返り呟いたひと言。
「おや、夢の中とは違うんだよなぁ...」

如何でした、極楽とんぼの百物語第一話。
少しは「クールシェア」出来ましたか。
それでは今宵涼しく眠れることを祈って、
ろうそくの火をひとつ消させていただきます。

☆極楽とんぼ☆

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